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私の履歴書(私の治療室から)
22nd 1月 2017
鍼専門としてスタートして早いもので20年ほどになります。
中途視覚障害でこの世界に入り、鍼灸の世界に夢をもってスタートしたとは言い難いのが実情だったのです。決して自慢できる話ではないですよね。
温穂堂スタッフとしてこれまで携わってきてくれた若者たちの姿勢とは大違いのスタートだったのですね。
そんな私でも振り返るとはや20年余り。ただただがむしゃらに前に進んできた日々の積み重ねだったようです。
ただ、そんな中でかかわらせていただいた多くの患者さんたちに支えられ、助けられ、学ばされてきた日々でありました。
本当に感謝なことです。
これからも多くの方々に支えられ、導かれて臨床家生活を少しでも長く続けていくことでお返ししていければと願っております。
私自身は汚点だと感じてきた闘病生活での苦しかった様々な経験が、臨床に当たっては決して無駄なことではなく、むしろ生かされていることに不思議な泄痢を感じています。
「すべてのことを益としてくださいます」この御言葉は本当のことなんだと感ぜずにはおられませんでした。
自らの心の貧しさに幾度ととなく苦しめられ、自暴自棄になったりしてきたこと。そして許されてきたこと、これらの貴重な体験が許されて臨床家として歩んでいる現在も、またこれからもずっと役立たせていただけるように心掛け、苦しむ人々のお役に立てるよう努めていきたいと願っています。
苦しんできた玄米菜食、漢方薬(煎餌薬)、10KM(キロメートル)ジョギング等々、家族に支えられてきた経験。
駅の階段をやっとやっと登ることしか出来なかった闘病期。
これらの貴重な体験が大きな財産となっている姿に驚かされ、これらの体験を通して学ばされてきたこと等、すべてが生かされていることにただただ感謝するだけです。
更に、すべてを通して皆様にお返ししていきたいと願いつつ。
私の治療室から 「感謝の手紙をいただいて」
10th 4月 2011
関西地区在住の方からの感謝の手紙
藁をもすがる思いで、温穂堂ホームページの問い合わせにメールを下さる方々がおられます。しかも関西や中国地方といった遠方からのお問い合わせが続いています。
そんな問い合わせになかなかメールのみではお答えできず、電話にて直接お話させて頂くことが多くなっています。。
本当に切羽詰った状態でメールを下さっていますから、生半可な答えなどは出来ません。結果、電話でお答えさせていただくと言うパターンが多くなっています。
そんな中で、メールをいただいてお答えした関西在住の方からの感謝のお手紙をいただきました。
困っておられた様子など書かれており、この手紙の内容を掲載することで、同じように困っておられる方々に少しでも安心を届けられたらと思い、ご本人の許可をいただき掲載いたしました。
【以下、お手紙の内容です】
『その節は、メールでのお問い合わせだけにも関わらず、わざわざお電話まっとで下さり、ご親身にご助言をいただきまして、本当にありがとうございました。
去年の年末辺りから、娘が風邪をひく機会が増え、その上、喘息症状も伴い始め、お医者さんから喘息と断言されたときは、本当にショックでした。私自身もアトピーや小児喘息があったので、当然のように言われましたが、親としては、自分の体質のせいで、大切な子供にまで同じ思いをさせると思うと、本当に落ち込みました。風邪をひき少しの咳が始まるだけで恐怖を感じ、以前のように、ひどくなれば入院させてしまうのでは・・・・と頭の中が不安で一杯で、慌てて小児科へ走るものの、出る薬は、気管支拡張剤の内服薬と、同じく気管支を拡張させる貼り薬での様子見でした。これで更に症状が出るようなら吸入が追加され、ステロイドの内服を追加する治療方針でした。
薬の常用を避けたい私は、あれこれと薬の質問を重ねるのですが、詳しくお医者さんの話を聞けば聞くほど、最悪の状況ばかりお話され、かえって自分の不安をあおるような上竅でした。
喘息の薬は予防薬が中心で、たとえ症状が出ていなくても、発作が出ないように、長期に渡り内服を続けては止めて様子を見るのが基本スタイルらしく、そんな薬の使い方を疑問に思いネットで調べてみると、同じような薬に不安や疑問を持つ親御さんの書き込みがたくさんありました。「内服していても発作のなるときはなる」「いつまで内服を続けるかわからない」「貼るテープはずっと貼っていても大丈夫?」「予防で薬ばかりに頼って、自分の体で治す力が失われない?」等々、長期薬を服用しているでも、必ず安定することなく、疑問がついて回るかと思うと、やはり、薬にすがるのはもう止めようと決心するものの・・・ひどい咳込みがくれば、そんな決心は直ぐに恐怖心に負けてしまい、手持ち薬に手が伸びて小児科へ通う日々でした。
そんな中、原因不明の高熱が出て微熱が続き、数回の解熱剤の使用と、2種類の抗生物質を三日間飲み、いつもの喘息予防薬も合わせて飲み続けていたところ、メールで相談させていただいた低体温の症状になりました。
お医者さんに相談しても、命に関わらない程度の低体温は見向きも去れず、素人ながらに、太陵の薬を短期間に摂取した副作用ではないかと思いながらも、お医者さんには、全く関係ないと言われ、不安な日々が続いていた時に温穂堂さんのホームページに出会いました。今から思えば、低体温にならなければ、温穂堂さんに出会えなかったので、低体温になってくれて良かったと思えるくらいです(笑)。
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アトピーも、以前は痒がり寝られず泣く娘を見ると、薬は抑えるだけと重々わかっていながらも、その場しのぎに薬を塗る日もありましたが、今は、痒がり多少ひどくなっても「身体から悪いものが出てる出てる、治ってるなぁ」と、好転的に考えられるようになりました。
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最近は、家の周りをマラソンしたり、遠くまで散歩したりと積極的に外で遊び、以前のように、風邪をひかせたら喘息になり、また薬を長期常用するのではと言う不安から、家にこもりがちな日々がなくなり、外で娘が上着を脱ぎたいと言っても、笑顔で「いいよ~。寒くないって強いね」と言えるようになりました。以前は、寒い=風邪=喘息=薬の長期常用の連鎖になっていた私は、恥ずかしながら脱ぎたがる上着すら脱がせてやれない精神状態でした。
身体を治療していただけるだけでなく、娘に薬の副作用を心配することなく、不必要な薬の乱用をせずにすむ安心感は、私の大きな精神の安定に繋がり、更に明るく楽しい生活をすることが出来るようになりました。
重ね重ね本当にありがとうございました』
私の治療室から「アレルギーのお話①」
05th 5月 2009
アレルギーのお話 ①
ゴールデンウィークも終盤を迎え、帰省ラッシュが気になる日々となりました。
例年、このくらいの時期になると、花粉症次第に楽になって凝られる肩が多くなるようです。
今回久々に、「私の治療室から」を書いてみようと思っています。私にはどうしても気になることがあるからなのです。
それは、アトピー・喘息に代表されるアレルギー症状を持つ幼児や小児のことが気になっているからです。当院においても、幼児の治療をおこなっていますが、その大半がアレルギー症状を持っています。生まれて数ヶ月でアトピーを発症して、顔や頭が赤くただれているグジュグジュの状態で来院される子供さんや、アトピーのほかに喘息も発症している子供さん、幼児なのに手足が冷たく湿っている子供さん、アレルギーのため除去食を保育園等に頼んでいる子供さん等、小さいからだで大きな問題を抱えています。
これからも更なる環境の悪化や食生活の貧困さに拍車がかかっていく時代になっていくのでしょうか?
もしそうだとしたら、私たちはどうやってアレルギーを発症させないでクオリティライフを実現していけるのでしょうか?
そんな状況の中、私のできること、鍼治療を通して、漢方の知識を活かして子供たちの成長のお役に立ちたいと思っています。
まず、はじめに大切なのは、お母さんのからだを変えていく努力をお願いしたいことです。
妊娠前、妊娠中はもちろんのことですが、「あなた手足は、暖かいですか?湿った手足になっていませんか?おなかを触ると冷たくなっていませんか?膝がなんとなく重く痛むときがありませんか?肩こりがあり痛みませんか?・・・・・・・・」このような症状はありませんか?からだがひえています。生活習慣や食生活の再検討をお願いしたいと思います。
まずは、できるところからはじめてみてください。
私の治療室から(その5)「続鍼はなぜ効くの?」
08th 3月 2007
『鍼はなぜ効くんでしょうか?』
このところ数回にわたってわかりやすく?書いてきました。が、実際はわかりにくいものだと思います。
そこで、今回は幼児・小児の治療からお話してみることにしましょう。
当院には、毎日のように幼児・小児が治療に来ています。アトピーだったり、喘息だったり、便秘だったり、風邪だったり、中耳炎だったり、副鼻腔炎だったり様々な症状の子供たちが来ています。このホームページの「治療法」の中で触れていますが、小児用に用いているテイシンの写真が載っていますね。絵でしか見ないとどういうものかさっぱりわからないでしょうが、辛抱強くお付き合いください。
まずは、このテイシンからお話していきましょう。
当院で使っているテイシンは、20金の金鍼で、皮膚に刺し入れない鍼なのです。実際には、刺さないどころか、幼児・小児に使う場合には特に、皮膚に接触すらしません。それで効果が現れるのです。この鍼を近ずけることによって、身体が良いほうに変化し、氣の過不足を調整し、症状を取り去るのです。先にあげた症状がありますが、これらの症状が改善され、完治へと導かれるのです。当然、大人と治療法は殆んど変わりません。そこには鍼数(ドーゼ)の差がありますが。
鍼治療のイメージといえば、鍼を刺す。刺すことで身体に刺激を与える。その結果、痛み等が治るという感じです世ね。
ところが、私が実際に幼少児に使っている鍼(テイシン)は、この観念を覆すものです。刺さないのに治っていく。そこにあるものといえば、刺激ではなく、氣の調整による治療というしか考えられないでしょう。
この氣の調整こそが古来からおこなわれてきている治療法(氣を調整する治療法=経絡治療)なのです。
「鍼は痛いもの。お灸は熱いもの」
もうこういう考え方ををやめましょう。このために、せっかくある治す機会が、失われては大変残念です。
幼少児が笑いながら、ニコニコしながら、お話しながら受けられる治療なのです。
氣の調整をおこなう経絡治療に、少し期待してみませんか。
『百聞は一見にしかずです』 一度経絡治療鍼専門の治療院へ行ってみてください。そこにはあなたの求めているものがありますよ。
私の治療室から(その4)「続鍼はなぜ効くの?」
08th 2月 2007
「鍼はなぜ効くの?」とやさしくわかりやすくをモットーに書いてきましたが、一向にわかりやすくかけないようです。でも、基本的なことは少しは理解いただけたかと勝手に思うことにしました(自分のふがいなさに気落ちしていますが、どうにもなりませんので、お許しください)
今回は、少し違うお話をしてみたいと思います。
例えば、肩が痛む、肩がこる、腕が痛くて上がらないという症状の方がおられます。私は、経絡治療を行う鍼師ですので、一般的にイメージされる痛むところにハリネズミのようにいっぱい鍼をするわけではありません。その原因となっている氣・血の変動(経絡の変動)をとらえ、全身の調整をしていきながら、個の部を調整していく治療法をおこなっています。
つまり、痛む部位への刺鍼も大切ですが、その部を通る経絡の変動を整えることも大変大切なことなのです。ですから、よく肩が痛むのに下肢への刺鍼で痛みをとったり、背中への刺鍼によって取ったりします。「不思議ですね。足に鍼をしたのに肩や、頸が楽になってきました」と、よく患者さんが言われます。実に不思議なことのようですよね。でも、これは魔法でも、不思議なことでもないのです。
経絡と言われる氣の流れが、ある一定の幅と深さを持っているため、肩のどの部に痛みがあるかによって、その部を通る経絡を調整することによって、その部の痛みを和らげていくためです。ですから魔法でもなく、不思議なことでもないのです。当たり前のことなのです。
前にも書いていますが、内臓を中心に全体を考える東洋医学においては、からだそのものが各内臓の支配下にあり、その反応の表れとして痛み等が出ていると考えます(実際に臨床に携わっていますと、非科学的なことと笑ってしまう人もいますが、まさにそのとおりと驚きの連続なのです)
鍼は痛むところへの刺鍼刺激で治すというだけでは、解決できないことが多いのです。そこには古典で言われている氣・血、虚・実、陰・陽という概念を中心とした刺鍼技術が必要となるのです。その体系が『経絡治療』ということになるでしょう。
私自身、鍼の勉強をすることになる前に聞いた「鍼灸マッサージは慰安業だよ」という言葉にそうではないはずと思いつつ、勉強をしているときに経絡治療に出会いました。私にとってすばらしい出会いとなりました。2000年も3000年も続いてきている鍼灸は、決してそのようなものではないのです。
鍼灸は病人を診ながら病気を治していく、れっきとした医学(東洋医学)です。少しでも、皆さんの意識が変わり、具合の悪い方が鍼にいけば楽になれ、治してもらえると思ってもらえるよう、益々鍛錬を積んでいかねばと思わされています。
これからも、健康に関すること、私なりに考えていること等、書いて参りますのでよろしくお願いいたします。
私の治療室から(その3)「続鍼はなぜ効くの?」
08th 1月 2007
「鍼はなぜ効くの?」と今回で3回目となりますが、書けば書くほどわかりやすくかけず、少し自己嫌悪に陥ってしまいました。わかりやすく書くことは難しいものだと改めて思い知らされています。しかし、このまま終わったのではさっぱりわからないままになってしまいますので、別の角度から再度チャレンジしてみることにしました。私が普段治療室で話していることなどをベースにしてみます。
まず、その1で書きましたように一般的な鍼のイメージは痛むところ・悪いところに鍼を刺して痛み等をとってくれると言うことのようです。これは大きな間違いではありません。実際にテレビや最近良く聞く健康番組等では、「この穴はどこそこに効く穴」「足のむくみにはこの穴を刺激してください」とかわかりやすく紹介しています。これは、東洋医学・鍼灸を普及すると言う観点ではいいのでしょうがこれだけでは東洋医学のすばらしさを伝えられません。
私たちは、生まれてこれまで西洋医学の中にどっぷりとつかり、西洋的な科学の中で生活しています。ですから鍼灸の世界においても病名・症状からこれに効く何々と考えてしまいます。鍼灸・東洋医学に携わっている私でさえ、ついつい西洋的なものの考え方をしてしまいます。ですから無理もないのです。でも東洋的な思想の中で生まれてきた鍼灸・東洋医学は、やはりその生まれてきた思想背景で考えていかなければ本来の意味を間違って解釈してしまいます。
またまた難しくわかりにくいことを書き連ねてしまいましたが、大切な部分ですので書いてみました。不十分な説明ですが、鍼灸の根底に流れる東洋的な思想・考え方と言うものがあることをご理解ください。
では、わかりやすく私が治療していることから書いてみましょう。
『頭痛のある患者さんの場合』
例えば偏頭痛の方で頭の脇が傷むという人がいます。一般的なイメージからすれば痛むところに鍼をすれば良い訳ですから、その部に何回も鍼をすることですむでしょう。でも、東洋的な古典鍼灸ではそうは考えません。「どうしてこの部に痛みが出るのか」これを東洋的に考察します。これを四診法(望・聞・問・切)を駆使し、原因(経絡の変動)を探ります。このときに切診のなかに含まれる脉診・腹診を十分に活用して経絡変動を見極めます。そして治療に入るのです。
その結果、この経絡変動を調整することによって、訴えのあった頭痛がなくなっていきます。このことは痛みをとるのみでなく、頭痛を発症しているからだの歪をも治しているのです。
次に、目の下にくまが出来ることがありますね。これは体が疲れきってぐったりしているようなときに見かけられます。それではこれを治すのにそこに鍼をするのでしょうか。そうされる方もいられるかもしれませんが。これは「胃・消化器系」の反応ですから体の示す変動経絡を理論によって調整することで次第に回復してくるのです。
このように、東洋医学のおける鍼灸は、東洋的な理論によってのみその力をフルに発揮できるといえるでしょう。
「鍼はなぜ効くの?と問われて答えるとすれば、東洋的な思考の内臓を中心とした経絡の変動が起こすからだの歪を鍼によって調整できるからです」と答えてしまいます。わかりにくいでしょうが。
ポイント
消化器の症状で次のようなことがあります。
- お腹がすいているのに食べるとすぐにお腹が一杯になる。
- お腹がすかないのに食べ始めると一杯食べれてしまう。
- お腹もすかないしあまり食べたいとも思わない。
これらはそれぞれに意味のある経絡変動を表しています。このような症状がある時には無理をして食べすぎず、からだを回復させることに心がけてください。
私の治療室から(その2)「続鍼はなぜ効くの?」
08th 11月 2006
「鍼はなぜ効くんだろう」との疑問について、前回少しお答えしましたが、『氣』がポイントとだけお話して終わってしまいました。
治療とは、「手当てから」始まったとも言われます。痛むところに手を当てることから始められましたそのことからすると、痛むところに鍼を刺す。痛むところを揉み摩る。と言うことはわかりやすいでしょう。しかし、それのみに留まらず、『氣』の存在を発見し、経絡経穴を見つけ出すことによって、経絡中に流れる氣・血の過不足を調整する方策を見つけ出したのです。この調整によって病や痛み等を治癒させていくことが更にパワーアップされていきました。この体系が完成し、古典と言われる医学書(黄帝大経)が紀元後間もなく完成されています。
ちょと難しい話になってしまいました。出来るだけわかりやすく例を挙げながら解説してみましょう。
例えば腰痛の場合。
当院に初めて来られて腰痛を訴える患者さんの中で、すぐにうつ伏せになって待っておられる方がいらっしゃいます。腰が痛いので、腰に鍼をしてもらいたいとの思いが働くのでしょうか。これに関しては、鍼灸未経験者でも同じ光景を見る事があります。つまり、潜在的に鍼は痛むところに刺すものとの固定観念があるのでしょうか。これもひとつの方法ではありますが。
私はすぐに仰向けになってもらい、問診等を行い、脉診を経て腰痛を起こしている基となる経絡の変動(氣・血の過不足)を見極めます。そして、この変動を調整することによって経絡のバランスをとり、そのことによって内臓(臓腑経絡)バランスを取っていきます。
その結果、腰痛を治そうとする力が増し(もともとあるが低下している治癒力を回復させる)痛みを取り除いていくことが出来るのです。
この際の刺鍼箇所は、病体が教えてくれている「証」によって示された手・足の要穴に対して行われます。この治癒力をまず増進させる刺鍼が大切なのです。
仕上げとして、痛む箇所への刺鍼を数本加えて治療を終えます。
やさしく書こうとすればするほどどつぼにはまってしまい、益々わかりにくくなってしまいました。
乳幼児の治療などは、てい鍼(ていしん)と呼ばれる刺さない鍼を用います。先ほど書いたように、体があらわす「証」によって手足の要穴にこの鍼を近ずけるだけで改善されていきます。
痛むところに鍼を刺し、刺激して改善させるとはずいぶん違いますよね。
「なぜ鍼は効くのか?」との答えにはなっていないようですが、鍼は痛むところに刺して刺激を与えて治癒させるというだけのものではなく、二千年以上前から伝えられてきている『氣』を調整すると言う極めて神秘的な刺鍼法・技術によってのみ達成されていくものといえます。
ポイント
「体が重く疲れやすい。気持ちが落ち込んで何にも出来なくなる等。この他、症状がある場合には必ず経絡の変動があります。氣による調整が必要です」
私の治療室から(その1)「鍼はなぜ効くの?」
08th 10月 2006
連日、患者さんの訴えられる症状を何とか和らげよう、具合の悪い状態を少しでも良い方向に向けていきたいと苦戦・善戦の日々を送っております。そんな中で、脉を診たり鍼をしたりしていますと、多くの疑問や質問を受けることがあります。
今回は、その中から『鍼はなぜ効くんですか?』との素朴な質問が心に残っていますのでそのことからお話していきたいと思います。
よく痛いところに手を当てる(手当て)ことで、少し痛みが和らぐように思うことがあります。これはその部に手を当てるということで、軽く圧迫する、手の温もりで冷えているところに温かみを与える等、その傷む部分を軽く刺激することで痛みが引いていきます。
このように考えますと、鍼も同じことのように思えますね。実際、このような考え方で鍼灸を行っている方々が圧倒的に多いことも事実のようです。生理学の詳しいことを明記できるほど優秀ではない私としては、皆さんの感覚的な面にすがりながら記載することになりますが。
つまり、痛むところに鍼をする、灸をすえると言うことは、なんとなくわかるような気がしますね。
「鍼をすると血行がよくなって痛みが引くんですね」なんかはよくお聞きすることです。
でも経絡治療の立場からは、違うのです。確かに反射作用としての効果は認めないわけにはいかないでしょうが、『氣』はこれをはるかに凌駕する力があると言ったほうがいいでしょう。
私には、気功師のような強い氣を持っているわけではありませんが、鍼という用具を通して生体と
『氣』の交流を行いながら、病態を治癒へと導いていくのです。
誰しもが『氣』を持っており、生体から『氣』を出しているのです。目には見えませんので厄介ですがある方法によってこの『氣』を感じ取ることは可能です。
こんなことを書いてしまうと「なんだか危ない人」と思われてしまいかねませんね。でも、鍼灸の始まりからこの『氣』と言う概念が大切にされてきたのです。
前置きが長くなってしまいました。この続きは次回にさせていただきます。
ポイント
「バランスの取れた身体は、免疫力を高め、病体を治癒へと導きます」
食養生について
08th 4月 2006
よく具合が悪いときや、風邪を引いたときなど、「栄養をつけないと元気になれないよ。とか、体が疲れぐったりしているにもかかわらず、もっと食べないと元気になれないよ」と言われ、肉等を一生懸命食べることが当たり前になっている昨今です。いつからこんな風になったのでしょうか。
私が幼かった頃には、あまり聞かなかったような気がします。元気な体を作るには、確かにしっかり食べることは大切ですが、果たしてからだが疲労し、まさに今、病と闘っている体にとって、しっかりと食べることはどうなのでしょうか。少し考えてみましょう。
その前に、ひとつ考えてみたいことがあります。
最近、粗食について話題となり、食べ過ぎの現代人に注意を喚起しています。私も粗食を勧めている一人ではあります。以前、ラジオを聞いていましたら、次のような話がありました。結構前のことでしたので正確には記憶していませんが、趣旨は次のようなことだったと思います。
最近話題の粗食に対して、少し批判的な立場からの発言です。
「ここまで平均寿命が延び、世界に冠たる長寿国となったのは、現代の栄養学の貢献が大きいと言えます。今、言われているような粗食では、ここまでの成果は出なかったのではないでしょうか」と言われました。
確かにこの点では貢献大とはいえます。戦前までの平均寿命はここまでではありません。しかし、食べすぎ、動物性のタンパク質の取り過ぎ等で半病人と言われる人たちが増えています。多くの場合、このような栄養過多の人たちが増え、高血圧・糖尿病・心臓病・脳梗塞・膠原病等多くの病気を生んでいると言えます。更に、アレルギーもタンパク質の摂取過多の結果、発症が増えているとの見解もあります。
栄養学によって寿命の飛躍的な延びが持たされましたが、その反面多くの弊害も生んできたのではと思わされます。それは、多くの方が病院を訪れ、多くの薬を服用している現状を見るときにそう思えてなりません。
今だからこそ、粗食が大切なのではと思えてなりません(私の勝手な思いですが)
さて、前置きが長くなりましたが本題に戻ることにしましょう。
わかりやすく事例を挙げてお話しましょう。
1.仕事が忙しく、眠っても疲労がぬけない場合
多くの場合、体の疲れを栄養を一生懸命取り入れれば、疲労回復し元気になれると信じています。食べれば元気になれる。特に、肉等しっかり取ればもう大丈夫。と言う常識があります。
しかし、果たしてそうなのでしょうか。
体が疲れきっているということは、体の基本となる内蔵諸機関も当然その機能を低下させています。体が疲れているのに内臓だけが元気とはなりません。疲れがピークとなれば、それに伴って食欲は落ちているはずです。
食欲を落として、体は自己防衛をしているのです。疲れている胃・腸に食べることによって更に負担をかけ、回復を遅らせているのです。
2.風邪を引いて、熱が出、体がだるい状態
体は風邪を治そうと熱を出し、ウイルス等と戦っています。つまり、ウイルス等と戦うために熱を上げるのです。
この状態で食事をしっかりと取ると、血液の多くが消化管に廻され、せっかく戦って必要とされている血液が不足してしまう事態に陥ります。その結果、戦いに負け、風邪の状態が長引いてしまいます。
これは極端な話ですが、できるだけ少食にし、余力を残しておく必要があるといえるでしょう。
このように、単に食べればいいというものではなく、そのときの体の状態によって、つまり体に聞きながら食べる必要があるといえるでしょう。
「腹八分に病なし」常人でこの数値です。具合の悪いときは「腹六分」ぐらいの必要があるでしょう。
ここまでは、私の体験したことと、学んだことから書かせていただきました。
次回から、江戸時代の貝原益軒「養生訓」から何回か学んでみたいと思います。
小児と低体温症
08th 3月 2006
昨年にも「冷えについて」の中で、小児の低体温についてお話しました。また、いつかこのお話をしてみたいと思いつつ、ようやく今月にその機会が訪れました。
私ごとですが、いつも朝、開院準備をしながらラジオを聞いています。ちょうど私が朝の刺鍼練習をしている時間、もしくは刺鍼練習後治療に向けて指を作っている時間に好きなラジオのコーナーが始まります。「ライフパレット・子育て応援コーナー」です。こう書きますと「あぁ~」とお分かりになられる方もいらっしゃるでしょう。私もこのコーナーのお話しを聞いて「なるほど~」と納得させられることが多いのです。その中で「小児の低体温症」に関するお話がありました。私自身もこの問題について以前に触れていましたので、いつも以上に耳を傾けました。そして、いつかまたこの問題に触れたいと思った次第です。
現在、四人に一人の割合で低体温の小児がいるそうです。当院を訪れる小児たちも大体の場合、手足が冷たく、しかも手足がかなり湿っているのです。
小児と言えば新陳代謝が活発で、体温が高いと言うのが通り相場のはずです。よく冷え性のお母さんが子供に添い寝するとき、湯たんぽを抱いているようだと言われたものです。でも、こんな話が昔話になってしまいそうな勢いです。このことを案ずるのは私だけでしょうか。
「どうして」と問われても、そこにはいろいろな原因があげられるでしょうから「これが」と言える決定的なものをあげることは難しいでしょう。でもあえてあげてみましょう。
ひとつは、生活習慣の変化です。現在、私たちは密閉された快適な空間で生活しています。昔のように隙間風が入って寒い部屋にいることはほとんどないでしょう。そのため外界からの刺激に対して弱い状態を作り出しています。更に、問題点は、クーラーの影響が非常に大きいでしょう。
タクシーの運転手さんが言います。「クーラーで冷やされるのが一番辛いです。芯から冷えてきていくら暖めても体が元に戻らないんです。冬の暖房よりもずっと悪いですね」
もうひとつは食事の問題でしょう。外国の料理が入り込んで、目にも口にもおいしい料理があふれています。そのため、日本人が培ってきた和食・家庭料理が忘れ去られています。日本人が大切にしてきた陰・陽がなくなってきました。そのために体を芯から温める食事が追いやられ、体を冷やす食事が人気を博しています。その結果、体は冷えるべくして冷えていると言えるでしょう。
冷えのために体調を崩し、治療に来られている方が大半です。
少し考えてみてください。忙しい日々を送っておられ、そこまで余裕がないとは思いますが、低体温の虚弱な子供さんではなく、子供らしい元気一杯な湯たんぽのようなお子さんに育てたいものですね。
一考をお願いします。
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