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妊娠中の障害から自然分娩(30歳代半ばの女性)
09th 2月 2006
一人目のお子さんも妊娠中に鍼治療を受けて出産された方で、妊娠三ヶ月に入って来院されました。
「お腹が痛くて辛いです。どうもお腹に水がたまっているようです。病院で検査を受けていますが、原因がはっきりしません」早速、問診しつつお腹を触ってみますと、どう見ても妊娠六ヶ月のお腹に見えます。三ヶ月のお腹には見えませんでした。下腹部を軽く押し付けますと痛みが出、腹腔内に水の貯留が伺えました。「医学的には原因がはっきりしていなくても、東洋医学では体全体を捉えて治療しますから大丈夫ですよ。治療しながら痛みをとっていきます。それと一緒にお腹の赤ちゃんの成長と自然分娩ができるようにやっていきましょう。お医者さんに診てもらいながら鍼もあわせて治療していきましょう」
初回の治療を終えるとゆがんで張っていたお腹がふっくらと軟らかく変わり、痛みも和らいで楽になっていました。この患者さんは、遠方からこられるため病院の通院にあわせて月2回の治療となりました。
妊娠五ヶ月に入ると痛みも落ち着き、安定した状態が続きました。初めは卵巣に水がたまっているらしいと言われていましたが、どうも以前手術した虫垂炎のところに問題があるのではといわれ始めましたが、結局のところ出産後調べてみないとわからないという結論のようです。
安定した状態が続き、妊娠9ヶ月に入り自然な分娩を導くため週1回の治療を継続しました。お腹に水がたまり産道を圧迫していて、自然分娩ができなくなる可能性が高いとの医師の言葉から治療間隔を短くしたものです。
臨月に入り、背部の「陣痛促進穴」の反応も現れましたので、反応部に適切な処置を加えて治療を終えました。無事赤ちゃんは水を押しのけて自然分娩で出産しました。
このところ、妊娠中にいろんな問題で来院される妊婦さんが増えています。鍼治療と聞きますと二の足を踏む人が多いとは思いますが、頭の片隅にでも鍼治療のことを置いてください。
鍼と針について(その2)鍼の意味する本質とは
08th 2月 2006
前回の中で鍼は「戒め」を意味し、鍼師自らを戒め、また患者さんをも戒めると書きました。そして「ひとつにする」と言う意味合いもあることに少し触れておきました。
それでは「鍼」と言う文字の「咸・かん」の意味するところから考えてみることにしましょう。
「同じにする」「心をひとつにする」と言う意味があります。更に、心をひとつにするとは、「陰陽の調和」をも示唆しています。
それでは「陰陽の調和」「同じにする」とは何を言っているのでしょうか。陰陽の世界からで東洋思想・東洋医学の基本的な考え方や思考の仕方等お話しておきましたが、ここでは「鍼・経絡治療」との関係からお話させていただきます。
まず、治療に際して五臓六腑のことから始めましょう。「陰陽の調和」とは、例えば「肺と大腸」との調和を指しています。つまり、この二つを調和させ、アンバランスな働きを等しくすることを意味しています。このことは他の臓器にも同じことが言えます。これら五臓六腑がその陰陽のバランスを整え、同じような力で働けるようにする。これを「鍼」によって実現していくこと。これが「鍼」と言う文字の現す意味と言えます。陰陽の調和、これは体のどの部位においてもです(詳細はコラム2005年の陰陽の世界からをを参照ください)
これらのことでお分かりいただけたと思いますが、「鍼」は陰陽の調和を実現していくための道具、しかもそれは「気」の過不足を調整し、陰陽を調和させるための道具と言えるでしょう。
このことからも「鍼」は、単なる刺激するための道具ではないと言えるでしょう。
「鍼の本質」とは、お分かりいただけたでしょうが、経絡の虚実を捉え、補瀉することにより「陰陽の調
和」を実現していくために用いられるも。「気の調整」をするために用いられるものと言うことができるでしょう。
これらのことは、多分に私見が入っていますが、「鍼」と言う文字はこれらのことを包含し、治療法をも示唆していると言っても過言ではないかもしれませんね。