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貝原益軒「養生訓」から学ぶ(その8)
09th 3月 2008
“ 貝原益軒 「養生訓」” 中公クラシックスより抜粋
みずからを欺かず
養生の要点はみずから欺くことをしないように、よく我慢することのある。みずから欺くというのは自分で悪いこと知っていることを嫌わないでするのをいう。悪いと知っていてするのは、あくを嫌うのが真実でないということだ。これがみずから欺くことである。欺くとは真実でないことだ。食事に限っていえば、たくさん食べるのは悪いと知っているが、悪いことを嫌う心が真実でないとたくさん食べてしまう。これがみずから欺くことである。その他のことも、これから推しはかれば良い。
完璧を望むな
すべてのことは、十のうち十までよくなろうとすると、心の負担になって楽しみがない。不幸もここから起こる。また他人が自分にとって十のうち十までよくあってほしいと思うと、他人の不足を怒りとがめるから、心の負担となる。また日用の飲食・衣服・器物・住宅・草木などもみな華美を好んではいけない。多少ともよければ間に合う。十のうち十までよいものを好んではならぬ。これもみな自分の気を養う工夫である。
よく知ること
ある人が、養生の道は飲食・色欲をつつしむのと同じであることは皆が知っている。しかし、つつしみがたく気ままになりやすいから、養生ができないのだといった。私はそうは思わない。これはまだ養生の術をよく知らないのだ。よく知ったら、どうして養生の道を行わないでいられよう。水に落ちれば溺死する。火に入れば焼死する。砒霜(ひそう・三酸化砒素の結晶)を飲めば中毒死することは、誰でも知っているから、水火にとびこんだり、砒霜を飲んだりして死ぬ人はない。多欲が生命をきずつけることは、刀で自殺するのと同じだという道理を知っていたら、どうして欲を我慢せずにいられよう。すべてその道理をはっきり知らないことは、迷いやすく間違いやすい。人が間違って不幸になったのは、みな知らないから起こったのだ。赤ん坊が這っていって井戸に落ちて死ぬようなものだ。
養生の道をよく知っていたら、どうして慾のままになって、身を慎まずにいられよう。
中を守る
養生の道は中を守るがよい。中を守るというのは、過不足のないのをいう。食物は空腹をなくすだけでやめておくがよい。間違って食べ放題になってはならぬ。これが中を守ることである。なんにでもこうするがよい。
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